Myブックマーク

松岡正剛の千夜千冊『蜘蛛女のキス』マヌエル・プイグ (みんなのコメント × 1 )
 武満さんがバベンコの映画に不満をもったのは、武満さんが人も知る大の映画狂いで、年間300本を見るという映画通だったせいによる。なにしろ淀川長治が「武満さんにだけは負けます」と脱帽していたほどなのだ。  その武満さんが『蜘蛛女のキス』に強い関心を示したのは、おそらく二つの理由による。ひとつは、あとで説明するように、この小説は映画の物語なのである。映画のような小説なのではなく、映画を見るということそのもの、映画を語るということそのものを取りこんだ小説なのだ。映画に体感エクリチュールというものがあるとすれば、その体感エクリチュールが文学になったといえばいいだろうか。たとえばジョリス・カルル・ユイスマンスが伽藍をそのまま文学にしたように、フィリップ・ロスが野球を文学にしたように、プイグは映画のすべてを文学にしてしまったのだ。  もうひとつは、この小説がホモセクシャルをテーマにしているということにある。  実は、これはあまり表立って語られていないことなのかもしれないが、武満さんはホモセクシャルにやたらに詳しい。詳しいだけでなく、かなりの好感をもっていた。実際にも交友関係には親しいゲイがたくさんいた。「だってゲイの数が一番多いのは音楽関係なのよね」と武満さんは口に手をあててよく笑っていたものだ。「で、二番目が美術家でしょ」。  映画を語るホモセクシャルな二人の夜が続く物語。これでは武満さんが食指を伸ばさないはずはなかったのだ。
(最終更新者:ニューラ)
KEYWORDS 物語(1) 蜘蛛女のキス(1) 読み物(1) 趣味(1) 松岡正剛(1) 書評(1) 情報(1) 文学(1) 映画(1) 小説(1)
みんなのコメント
ブログペットをはじめよう!